文系の彼が言うには

高校時代の友達が札幌に帰ってきた。何度か遊びに行ったりメシを食ったりしたのだが、ひょんな話題から文系と理系の違いのようなものが見えた。

彼(A)は文系。両親は理系、兄弟も理系、Aだけ文系。一方俺は根っからの理系。Aとはクラスが文理に分かれる前からの仲。

「札幌のメシは上手い。おかげで数キロ太ってしまった」とAは言う。確かにそうなるだろう。地元で生活すれば地元特有の味に慣れるし、実家でとる食事はまさに"ふるさとの味"、どんなものでもおいしく感じられて多少太ってしまうのもわかる。続けてAはこう言った。

「腹の中に寄生虫でも飼いたいよw栄養分を吸い取ってくれる奴さw」

俺はこの一言で「え?」と思った。

芸能人の噂話で、「あの女優は寄生虫でダイエットしたらしい」なんていう話はたまに聞く。一般的なものなのかはわからないけど、その存在自体は知っている。もちろんAも本気で言ってるわけじゃないのはわかっている。

でも俺は考えてしまう。おかしくね?

腹八分目なんていう言葉があるので、平均体重の人は一度の食事で80食べるとしよう。これが太るか痩せるかのラインとする。では寄生虫を腹で飼育している人はどうなるか。寄生虫を飼うほどということは、おそらくその人は食べることが好きなので、一度の食事で80以上は食べるはず。寄生虫に期待して100食べるかもしれない。100とった食事のうちのいくらかは寄生虫が食べてしまう。寄生虫が20以上食べてくれたら、一見その人は痩せそうだ。しかしそうはうまくいかない。寄生虫が20食べたとしたら、その人自身は80しか食べていないことになり、さらに20食べたくなる。しかし20食べたとしたら寄生虫はそのうちの5を栄養として取り込む。すると宿り主の方はその分をさらに食べる…と続いていく。

最終的にとる量は、(宿り主の分100)+(寄生虫の許容量x)となる。宿り主は80以上食べているので太る。おまけに体内に寄生虫がいるぶん体重は増す。宿り主が普段の量の食事をとれば痩せることはない。

もちろんこのダイエット法もそれなりの効果があるようだから、その他の要因が絡んでくるのかもしれない。しかし摂取量としてみれば明らかにおかしい。これは議論すべきだ!と息巻いて助手席のAを見た。

「そしたら甘い物とかも食べ放題だよねw」とスイーツ好きの女子よろしく、遠い空を眺めていた。

俺は少し恥ずかしくなった。